CB無線

CB機の新技適をパスするまでの経緯


 私は、アマチュア無線のコールサインJG2TSLの他にシズオカAB634という市民ラジオのコールサインも持ち、CB無線も楽しんでします。
この度、CB機で新技適を通すことができましたので、経緯等を書かせていただきます。

CB無線 回顧録

 小学6年生の時、BCL少年だった僕は「自分でも電波を出してみたい!」と思い立ちました。
当時、愛読していた「ラジオの製作」誌には、めぐろE55皆川さんが連載記事を書いており、そこにはこのようなことが書かれていました。
「CB無線もアマチュア無線も、どちらも電波を使って交信する趣味という点では同じ。0.5Wだからと言ってCBをやっていることに恥じることはない。」
大まかに書けばこんなことです。アマチュア無線を始めるには試験を受けなければならないし、まずはCB無線を始めてみることにしました。

 
ラジオの製作誌 1979年9月号

 小学生なので、最も大きな収入源はお年玉です。1981年のお正月、親や親せきからいただいたお年玉をかき集めて2万円ちょっと。
静岡市内の岩崎ラジオに行くと、そのお年玉で買えるCB機は500mW2ch機のICB660でした。8ch機にはお年玉の額が届かない。
このトランシーバー、デザインが洗練されていて、小学生にはかっこよく思えたんですね。
(ICB660は、グッドデザイン賞を受賞してます。)


1981年 SONYのカタログより

 2chしかないけど、500mWあれば遠くと交信できるんじゃないかと思い、それを購入してきました。
当時は免許申請が必要だったんですね。電波監理局に開局申請書を送ると、1週間ほどして無線局免許状が送られてきました。
その時にいただいたのが、この「シズオカAB634」というコールサインです。

 はじめはノイズしか聞こえなくて、よくわからないまま。
2週間ほど経った日曜日、ついに静岡市内のシズオカAA811局と交信できました。
やっとで交信できて、嬉しかったです。

 当時はQSLカードの交換をする局も多かったです。この初交信のQSLカードもいまだに保存してあります。
コールブックなんてないので、交信の時に電波の上で住所や氏名を言って、QSLカードを交換していました。
個人情報に厳しい今では考えられないです。

 静岡市内にもたくさんの局がいて、日曜日になると近くの賎機山に歩いて上ってはラウンドQSOしていました。
自分のトランシーバーは2ch機なので、1chと2chしか出られません。どちらのチャンネルもFCCのチャンネルと近く、違法局とも交信できてしまいます。
わりと皆さんフランクで、合法局と違法局と入り混じってラウンドQSOしたりしていました。

 そのうち、住所がわかると、そのお宅まで自転車で訪問したりしました。いろんな方にお会いしました。
こちらは小学生なので、皆さん、親切にしてくれましたね。

 その中の一人が三重県から就職で静岡にやってきたミエAA469局です。家も近かったこともあり、一緒に移動運用に行くようになりました。

 中学生になって行動範囲も広がりました。ゴールデンウィークには秋葉原で開催されたラジオの製作誌主催のイベントに出かけ、たくさんの人とアイボールQSOしました。
アイボールでもQSLカードの交換をしたりして、その中には、今でもアクティブな方がいたりします。

 1981年夏、家族旅行で出かけた兵庫県の六甲山。CQを出したものの、違法局の混信が激しくて交信に至りませんでした。
でも、その時に「CBLリポートください!」とアナウンスしたら、1週間後に数枚のCBLカードが到着して驚きました。
ちゃんと自分の電波は届いていて、聞いていた人がいたのですね。

 その夏には電話級アマチュア無線技士を講習会で取得。

 1982年2月にJG2TSLのコールサインでアマチュア無線開局。50MHzSSBでアマチュア無線デビューしました。
ミエAA469局も既にアマチュア無線デビューしていて、50MHzで交信しました。
他にもCBですでに交信したことがあった局が何局も50MHzSSBにはいて、すぐにアマチュア無線での交信にも慣れていきました。

 1982年の7.25大作戦。焼津市高草山山頂まで自転車で出かけました。友人の中学生4名+ミエAA469の5名で泊りがけで移動運用。
夜は豪雨になりましたが、その時は外部アンテナを取り付けてアマチュア無線を運用。
翌日は雨も上がり、CB無線を楽しみました。楽しかったですねー。
この時に、あのシズオカAB635局とも交信しています。1番違いのコールサインと交信できるとはびっくりでした。


ラジオの製作誌 1982年9月号の記事より

 高校生になっても、アマチュア無線の傍らCB運用。でも、アマチュア無線に傾倒し、初期のころよりもCBに出る頻度は少なくなっていきました。

 1987年、大学生になって上京。大学では無線部に所属して、自身のアマチュア無線活動も全盛。
アンテナ製作に励み、コンテスト参加に燃えていましたが、休みの日にはCB機のスイッチを入れて交信を楽しんでいました。
さすが、首都圏。静岡よりもたくさんの局がいました。

 アマチュア無線でなければできない経験もたくさんしました。海外との交信やコンテスト、電信、データ通信、月面反射通信など。
それらはCB無線では不可能なことです。しかしながら、CB無線でなければ味わえない楽しみは確かに存在すると思うし、だからこそ今でもCB無線の運用を続けています。
0.5Wにロッドアンテナ、27MHzAMの8ch。この縛りの中でしか体験できない楽しみが確かにあると思うのです。

 1995年に実家の静岡に戻ってきました。1990年代後半〜2000年初頭もCB無線の運用を続けていましたが、静岡県内には数局しかおらず、近くの山からでは交信相手がいない。
伊豆の山にアマチュア無線の移動運用に行った際に、CB機も持参して関東の局を探すような状況でした。
その頃は、まさか、この後、今のような再ブームがやってくるとは思いもしませんでした。

 2008年、ミエAA469局と久しぶりにお会いました。
その時に「CBのアクティビティを上げてほしい」とRJ580を譲り受けました。

 この後、急激にCB人口が増えていきます。
今のCB再ブームには地道に活動を続けていた熱心な各局の努力の賜物だと思います。
私自身はこの再ブームには何も貢献できず、ただただ、たまに運用するくらいのアクティビティを保っていただけです。

新スプリアス問題

 この問題が出てきたのが、2005年でしょうかね。期限が2022年までということで悠長に構えていました。
もうCB機に新機種なんか出ないだろうな、と思っていたら、2016年にサイエンテックス社からSR-01が発売されました。

これには驚きました。CB無線を続けたい、そう熱心に活動している方が日本中にいるんだな、と感じました。
ただ、この時はすでに結婚しており、子供も生まれているので、自由に使えるお金が限られています。
自分には購入できる資金がありません。まだ、時間もあるし、と、自分自身は相変わらず、のんびりしていました。

 そうこうしているうちに2018年です。アマチュア無線の方でも新スプリアス対策をする必要が出てきて、いよいよこの問題に対応しなければならなくなってきました。
アマチュア無線の方は母体も大きいため、TSSやJARDが新スプリアスに対する対策方法を確立していきました。

 で、CB無線はどうなるのか。選択肢がいくつかあります。

1.新技適対応の新品を買う。
2.既存の機種を新技適対応してもらうように誰かに頼む。
3.既存の機種を新技適対応でいるように自分で改造する。

 どれにしようか迷っていました。

新技適取得のきっかけ

 2018年2月。浜松で開催された「ハムの祭典」にジャンクを売りに出かけました。そこで、しずおかDD23局とお会いしました。

 しずおかDD23局とは10年ほど前に交信してから、数回、お会いしており、その間に、あのICB-R5 RX27も拝見させていただいたこともあります。
初めてRX27を見た時は、大きな感銘を受けました。個人レベルでここまで機能が盛れるのか、よくあの筐体に収まったものか!
そして、あのアイデアの斬新さ! しかも、それで新技適まで通しています。

 この時にしずおかDD23局から新技適について根掘り葉掘り聞きだしました。
RX27の域まで到達するほどの発想力と技術は自分にはありません。
でも、最小限の労力で手持ちの機種を新技適に対応する希望は持っていました。
立ち話で情報をもらううちに「ひょっとしたら、自分でも新技適を通せるのではないか?」と思い始めました。新品を買うよりも安くできそうです。

 その後、ネットを調べると、フクオカAB182局のホームページを発見。何度も何度も見返します。非常に詳しいホームページでした。
これを一つずつ実行していけば必ず技適は通るはず、そう思い一つずつ実行していきました。

検査に必要な性能は以下の通りです。

条件1.周波数の許容偏差:百万分の50

→26.968MHzで計算すると1.3484kHz

条件2.帯域外領域不要発射の強度:1mW

→26.968MHzで計算すると帯域外領域=26.953MHz〜26.965MHz,26.971MHz〜26.983MHz
→1mW=500mW-27dB

条件3.スプリアス領域不要輻射の強度:50μW

→26.968MHzで計算するとスプリアス領域=10kHz〜26.953MHz,26.983MHz〜1GHz
→50μW=500mW-40dB

条件4.空中線電力許容偏差:+20%、-50%

→500mWだと、250mW〜600mW

条件5.占有周波数帯幅の許容値:6kHz

→26.968MHzで計算すると26.965MHz〜26.971MHz

条件6.受信時の不要輻射 -54dBm以下

→4nW

実際の改造内容

 CB機は数台所有していますが、筐体が大きくて余裕がありそうなRJ580で新技適対応していくことにしました。
ミエAA469局から譲り受けた、あのRJ580です。
フクオカAB182局のホームページにもRJ580が例として挙げられていたので、応用が少なくてもいけそうだと思ったこともあります。
新技適取得までにしずおかDD23局からはたくさんのノウハウをいただいております。感謝感謝です。

1.電池ケースの自作

 RJ580では単1電池を9本使用しており、かなりのスペースを筐体の中で占有しています。
フィルタ類を作成しても収まるスペースがありません。
外部電源専用機にして電池ケースを取り払うことも考えましたが、やはり、それでは携帯性がありません。
そこで、単3電池仕様に変更し、専用の電池ケースをつくることにしました。電池8本仕様とし、動作電圧も12Vに変更。
銅板をホームセンターで購入し、仕事で付き合いのある板金店で加工してもらいました。
これでスペースを確保です。

2.マイクコンプレッサの製作

 TA2011を使用したマイクコンプレッサを取り付けると過変調対策になるということなので、このICを探しますが、既に廃番です。
互換ICであるSA2011を使用したマイクアンプキットがデジット社から出ており、これを既存のマイクアンプと差し替えて取り付けました。
しかし、思ったようにコンプレッションしません。
 しずおかDD23局からのアドバイスではこのマイクコンプレッサの前に1石のマイクアンプを付けた方が良いとのこと。
これではゲイン過多になるのでは?と思っていましたが、それは間違いでした。
マイクコンプレッサの前に1石アンプを挿入すると、しっかりコンプレッションします。
というわけで、一度、撤去した既存の1石マイクアンプを復活させました。基板のパターンはグチャグチャです。

 その後、このICを使ったコンプレッサを何種類か作ってみましたが、最終的にはフクオカAB182局からいただいた回路で構成しました。



 一つだけ気づいたことを書きます。6番ピンに接続するコンデンサの値を大きめにすると、コンプレッションが始まるまでにタイムラグがあり、
しゃべり始めの一瞬、過変調になり、電波が広がります。

3.マイクAF LPFの製作

 占有周波数帯幅が6KHz以上にならないように3kHzのマイクAF LPFを作成しました。段数が多くなると基板も大きくなり、スペースがありません。
かと言って、段数を減らすと、スカート特性が良くありません。
そこで、f=2222Hz、減衰極=4050Hzとして以下の回路を設計して組み込みました。インダクタは市販品です。

4.受信BPFの製作

 受信時の不要輻射対策です。(局発の漏れ等)
トロイダルコア活用百科に掲載されていた-1dBタイプのものを組み込んであります。
-6dBタイプだとスカート特性は良いけれども、減衰が大きすぎます。
 

低い側がばっさり切れているので、近くでアマチュア局が7MHz辺りを運用してもびくともしないと思います。

5.送信LPFの製作

 いくつも製作しましたが、スペースの関係で小型化する必要があり、減衰極を活用した以下のものを設計して組み込みました。

 何もしないと、以下のようなスペクトラムです。

第2高調波が-30dBくらいでアウトです。

 これを落とすために、スカート特性を急峻にする必要がありますが、段数を重ねると大型化していきます。
そこで、段数は最小にして、第2高調波を狙い撃ちする減衰極付LPFを取り付けました。

 第2高調波は-60dBくらいまで抑えられています。-40dBの規定値に対して20dBくらいマージンがあり、余裕があります。
第3高調波にはあまり効かず、第2高調波よりも8dBくらい高いけれども、-50dBくらいはとれています。10dBのマージン。
あと、21MHz台、27MHz台にいくつか不要輻射が見えますが、-50dB以下。これらはこのフィルタでは除去できませんが、-40dBの規定値に対してはマージンがあるので未対策です。

 ちなみに実験段階では第2高調波、第3高調波それぞれの減衰極をもったフィルターも試作していますが、思うような性能が得られませんでした。

上記、4と5を1つの基板上に組み、中央に配置した高周波リレーでアンテナとの接続ケーブルを送受信で切り分けました。
(ダイオードスイッチの方がスマートでしょうけどね。)

左が受信BPF、中央が高周波リレー、右側が送信LPF

6.基板上の信号線の整理

 局発→混合等、高周波が通る部分は基板上で通すのをやめて、別途に同軸ケーブルで配線しました。(1.5D-QEFV)
基板のパターンはカットしています。

7.局部発振器の出力を弱く

局部発振器の高周波がスプリアスの原因になることがあるようなので、局発出力を弱めにしています。

8.アンテナ系統の切り離し

 基板上にあるローディングコイルを取り外し、ロッドアンテナ根元に別基板を装備して移動。
これと送受信切り替えリレーの間の同軸ケーブルによる配線の途中にSMAのジャックとプラグで
中継し、そこで切り離しができるようにしました。容易に測定できるし、試験の時の接続にも便利です。

9.特殊ねじに交換

 筐体を止める各部のねじ、電池ボックスを固定するネジは全てセンターピン付きトルクスねじに交換してあります。
ネットで買えば、そんなに高価でないし、専用ドライバーも手に入れてしまえば、保守性に問題はありません。
これで封印の代わりとなります。


10.局部発振器の周波数調整

 局部発振器の水晶が金属ケースに封入されているとはいっても、結構周波数がずれています。
周波数カウンタで測ると、搬送波周波数は以下のような感じでした。

1ch 26.9673MHz -700Hz
2ch 26.9756MHz -400Hz
3ch 27.0394MHz -600Hz
4ch 27.0794MHz -600Hz
5ch 27.0866MHz -1400Hz
6ch 27.1113MHz -700Hz
7ch 27.1191MHz -900Hz
8ch 27.1433MHz -700Hz

もっともずれているのが5chで1400Hzもずれています。これだとアウトです。
全体的に下にずれているので、トリマコンデンサを調整して、以下のような値に落ち着きました。

1ch 26.9678MHz -200Hz
2ch 26.9763MHz +300Hz
3ch 27.04000MHz +-0
4ch 27.0801MHz +100Hz
5ch 27.0872MHz -800Hz
6ch 27.1119MHz -100Hz
7ch 27.1196MHz -300Hz
8ch 27.1440MHz +- 0

水晶によりばらつきがあるので、すべての周波数をぴったり合わせるとなると、水晶一つずつに微調整できる仕組みを装備すればよいのですが、
規定は1.3kHz以下ですので、これでも十分にクリアします。もっとも、トリマコンデンサで追い切れるのがここまででした。
ここは割り切って、これでよしにしました。

--以下は技適には関係ありませんが改造点として記録します。---

11.マイクラインアイソレーションの確保

送信時にハム音が載るので、マイクラインにアイソレーショントランスを入れました。(ST-71)
元回路でもRFCが入っているのですが、さらに強力にアイソレーションできました。

12.外部PTTの装備

PTTスイッチによる切り替えをリレーに置き換えて、外部PTTを使用できるようにしました。

13.外部マイク端子の増設

8pin のマイク端子を取り付けました。(鉄板の加工には苦労しました。)
Kenwood配線にしてあります。僕のお気に入りのMC43Sが使えます。

14.DCプラグの改造

2つのピンが並んだ既存のDCジャックは、プラグの方が入手できません。
そこで、SONYと同じような丸いDCジャックに変更しました。
ちなみに、ダミープラグも用意しており、これを挿しておけば、運搬時等に不用意に電源が入りません。

15.チャンネルセレクタスイッチの交換

チャンネルスイッチをタクトスイッチに交換しました。
オリジナルのプッシュスイッチのように背の高いタクトスイッチはありません。
既存のプッシュスイッチをばらして、その中のパーツを流用してタクトスイッチのかさ上げを行っています。

16.バックライトの白色LED化

17.インジケーターの追加

 既存MIC端子の穴を流用しました。2色LEDを使用しており、受信時は緑色、送信時に赤色に光ります。

18.チャンネルセレクタLEDの一部色違い化

 8chは緑色です。

19.測定用器具の作成

 測定の時に便利なように外付けの変調入力用の器具を作成しました。
PTTがロックできて送信しっぱなしにできるのと、外部入力端子を装備しています。
また、600Ω-10dBのATTをON/OFFできますので、60%変調+10dBの切り替えがワンタッチでできます。

 他にも素子や部品の交換、定数の変更、その他、細かな調整点はありますが、大体こんな感じです。

 20年来使っていたアナログのスペクトラムアナライザが表示不良になり、新たにヤフーオークションで中古のスペクトラムアナライザを手に入れたりしました。

(2種類のスペアナ画像が登場するのはそのためです。)

 感度調整のためにミリバルも手に入れました。それらに技適の試験費用を合わせると、新品の新技適機は買えてしまうのですがね・・・。

そして、新技適試験へ

 いじりだしたらもう後戻りは出来ません。途中、挫折して、ほったらかしにすることもありましたが、そろそろ2018年も終わってしまう!

 11月に入って、最後の一押しを頑張って作業をし、TELECに書類を提出。
試験の日は11月22日としました。この日はビッグサイトで建築の展示会があるので、それにかこつけて上京することにしたのです。

 試験日の予約はその1週間前に行いました。

 試験の4日ほど前に最後の調整を行っていたら、ファイナルが発振。原因を追究するのに、深夜1時までの作業が3日ほど続きました。
原因は同軸ケーブルの網線の切断でした。何度も動かしているうちに切れてしまったみたいです。
また、最後の最後までハム音が送信音に乗るのを取り切れず、最後は妥協して試験に臨みました。

 11月22日。朝8時過ぎの新幹線に乗って上京。モノレールに乗り換えて、大井競馬場前で下車。歩いて東京のTELECに向かいました。
社屋の前で空を見上げて深呼吸。自動ドアから社屋に入り、担当者と共に厳密なゲートを超えて試験室に向かいます。エレベーターの中は緊張で無言のまま。

 試験室に入り、10時に試験開始です。ハム音は乗らないか? 変な発振はしないか? 安定した動作が続くのを祈りました。

 スプリアスを抑えるフィルタの動作にはそれなりの自信があったし、実際の試験の時も規定値より10dB以上のマージンがありました。これは問題ありません。

 心配していたのは60%変調+10dB時の第5側波のレベルです。自分の測定方法に誤りがないのか不安だったのです。
しかし、結果は10dB以上のマージンをもってクリアしました。マイクコンプレッサの威力です。
現地で測定値を聞いて一安心。この時に「受かったかな」と不安が自信に変わっていきました。

 いくつかの小さなトラブルがあったものの、11時過ぎに無事に試験は終了しました。合格です!

 実際のところ、自分自身、不合格になることも想定していたので、これまでずっと、ごく一部の方以外には秘密に作業を進めていたのです。
これで公にできます。

 ここに至るまでに費やした時間は100時間を下りません。
当初は仕事の後に夜な夜な毎日3時間くらい測定、試作、製作、改造に費やしていました。

 先に新技適を通した先輩方のように自分は器用ではありませんから、失敗の連続です。
特別な機能があるスペシャル機でもありません。内部の配線はおせじにもきれいとは言えません。
しかし、新技適をパスできたのは大きな喜びでした。

 技適シールが貼られたRJ580を抱え、技術基準適合証明書を手にしてTELECの建物を出た後は、心の中でガッツポーズをしていました。


TELEC隣の公園のベンチにて

 (午後はちゃんと建築の展示会を視察しに、ビッグサイトに行きましたよ。)

エピローグ

 新品の新技適機を買う金銭的な余裕がない、という理由で始めた新技適への対応でした。
しかし、この過程を通して、高周波の電子工作の経験が得られたことが自分にとっての大きな収穫でした。
これは金額に換算できません。


 こんな不器用な自分です。他人の新技適対応を請けるなんてとても出来ませんから、そのような依頼は一切お断りします。

 しずおかDD23局やフクオカAB182局のアドバイス、他の新技適取得の先輩方がホームページ等で開示してくれた情報が、私の新技適取得にとても有意義であったように、
ここに書かれていることが、これから新技適取得に向けて動き出す人の参考になったら、と思い、記録、公表することにしました。

 私はCB無線もアマチュア無線もどちらも大好きです!
これからもCB無線、アマチュア無線のどちらも続けていこうと思っています。


(もっとアクティブに電波出さないとね!)

2018/12/4


メインに戻る


ご意見、ご感想はこちらまで→jg2tsl@jarl.com