○ EME ○

1997 ARRL EME CONTEST

 〜モービルのRIGでEMEのシグナルを聞いてみました。〜


さらにお手軽にEME受信を

 1996 ARRL EME contestから1年。今年に入ってからは、再び50MHzのJCC/Gハンティングや、HFでの国内コンテスト、21MHzでのDXとのラバースタンプQSOと、EMEと離れて無線を楽しんでいました。しかし、1年振りに、またあの月からの信号を聞いてみたい、できれば、またQSOしてみたい。そう思ってまた移動運用してみました。

 しかし、1年前と同じでは面白くありません。そこで、設備の再検討をしてみました。と言っても、今回は「さらにお手軽な設備でEME受信を。」がコンセプトです。

設備

 一般に、受信機の総合NFは、フロントエンドのゲインとNFに依存すると言われています。これは、とにもかくにもフロントエンドの性能を強化すれば、感度は上がるということになります。

 先日、IC-706mk2というモービルトランシーバーを購入しました。50MHzは聞けるし、21MHzでモービルからのDXQSOもできます。しかし、144MHzではあまり使用したことがなく、「IC-706mk2の2mは"オマケ"だから使えない。」と言う話も聞いたことがあります。でも、そうなると試してみたくなるのが僕のへそ曲がりなところ。総合NFの決定に支配的なのがフロントエンドのNFだとすれば、親受信機のNFに関わらず、低NFハイゲインのプリアンプが1段さえあれば、どんな無線機でも総合NFが下がることになります。(強信号特性についてはここでは考えないことにしてのお話です。)

 そこで、手持ちのリニアアンプ(DAIWA LA-2065R)に入っているプリアンプを改造してみることにしました。以前、まとめ買いしておいたFSC11というGaAsFETを使用し、入力LC共振回路、出力側はコンデンサによる広帯域結合としました。十分な低NFハイゲインになっている自信はありませんが、自分にしては発振しないでうまく動作したので、これを使用してみることにします。

 「お手軽に」ですから、アンテナ接続もいい加減なものです。普段、ついているモービルホイップの代わりにショートケーブルを接続し、車の屋根の上に置いたリニアアンプに接続します。モービル基台のコネクターのロスも、車の内部配線のロスもありますが、それよりもアンテナに近い場所にプリアンプとリニアアンプがセットされているので、送受信共に問題は無いと考えてしまいました。(ちなみに、IC-706mk2は144MHzは20W出力なので、同軸のロスがあっても、リニアアンプには10Wは供給される。)

 アンテナはいつもの14エレのスタックです。周波数は144MHzです。

運用の様子

 1997/11/15 夕方の16:00に家を出発して、またも清水市の駒越海岸に移動運用。16:30頃には現地に着いて、月の出の18:00にはまだまだ時間があるな、余裕余裕などとアンテナを組んでいたら、重要な忘れ物に気がつきました。なんと、給電エレメントのフォールデッドダイポールが1本ない!! 半分、組んでしまったアンテナを海岸に置き去りにして、家に戻ることにしました。が、これでは月の出にも当然間に合いません。それどころか、かなりのタイムロスです。半分くらい引き返したところで、ハムショップがあるのを思いだし、急に進路変更。マスプロの5エレが1本だけ在庫があったので、即購入。これで現地に戻りました。給電エレメントは少し長さを伸ばさなくてはならないのですが、たまたま車に載っていた錫メッキ線を細工。これでアンテナを上げました。

 初めは水平偏波でアンテナを組みました。早速、無線機に接続して、ワッチ。すぐにW5UNを見つけました。しかし・・・弱い。やっぱり無線機がいい加減だからいけないのかな?とも思ったのですが、試しにアンテナを垂直偏波にしてみました。すると、W5UNの信号も完全にコピーできるほど強くなりました。「これならできるかな?」と、何度も呼びますが、「QRZ?」すら返ってきませんでした。水平偏波のまま送信した方が送信については良かったのかもしれません・・・。このあとも、ずっと垂直偏波でワッチを続けました。

 22:40頃までWの信号を聞き、最後まで聞こえていたK7CAも聞こえなくなり、とりあえずお休みにしました。すると、JL2HIWの良知さんが遊びに来ました。何もお聞かせすることはできませんでしたが・・・。仕事疲れの良知さんは、車内で寝てしまい、僕も寝てしまいました。01:00過ぎに良知さんも帰ってしまいました。さらに仮眠した後に、02:30頃からワッチを始めます。まだ仰角がかなり高いのでグランドリフレクションが使えないかな?と思ったのですが、すぐにI2FAKをみつけました。その後も、ヨーロッパの局が結構良く聞こえました。

 06:00過ぎになり、F3VSくらいしか聞こえなくなりました。偏波が変わったのかな?と思い、アンテナを水平偏波にしてみましたが、全く聞こえません。そうこうしているうちに月が沈んでしまいました。

 ちなみに、今回は天気が曇り。月が見えないことが多く、方位磁針でアンテナの方向を合わせてみるものの、やっぱり不安です。そこで、雲の切れ間から月が見え出すとすかさず車から下りて、月にアンテナを向けていました。ローテーターは無いので手動です。アンテナの重心を少し前に傾けておいて、リフレクターから伸ばしたロープを引っ張って位置を固定するという方法で向きを合わせていました。


今回の成果

 結論から書くと、QSOゼロです。やっぱり、よっぽど運が良くないと50WではQSOに至らないようです。しかし、今回は過去の移動運用の中では最も沢山のコールサインをコピーすることができました。QSOが1つもできなかったのはやっぱり悔しいのですが、SWLとしては大変楽しめた移動運用でした。計17HRDでした。

受信局リスト

時刻 コールサイン 周波数 メモ
19:00 W5UN 144.028 22:10くらいまでずっと聞こえていた。
19:00 K5GW 144.008 その後、144.031MHzでも聞こえた
21:40 K7CA 144.022 Wの中では最後まで聞こえていた。
22:00 WA6PEV 144.013 初受信。
22:32 K6MYC 144.030 初受信。一瞬聞こえただけだった。
02:26 I2FAK 144.023 EUのパイロットにしていた。
02:30 IK3MAC 144.012 初受信。03:40、05:17にも確認。
02:40 SM5FRH 144.016 その後、144.018辺りでも聞こえた。
03:00 I3DLI 144.019 初受信。05:10にも確認。
03:15 7K3LGC 144. エコーが聞こえる。
03:30 SM5DCX 144.026 初受信。
03:35 EA2LU 144.015 初受信。05:17にも確認。
03:45 I5JUX 144.036 初受信。
04:08 F3VS 144.030 06:00頃までEUの中では最後まで聞こえていた。
04:23 HB9CRQ 144.038 初受信。独特のキーイングだった。
04:25 LZ2US 144.038 初受信。HB9CRQとQSOしていた。
04:46 SM5DSZ(?) 144.022 SM5BSZなのかな・・・?


 今回は写真がありません。失礼! (もっとも、1年前とあまり変わりません。)

 しかし、またいくつかの信号を録音をしてきました。

SP K5GWの信号を聞いてみる(REAL AUDIO)
(今回聞いた中では最も強い信号の1つ)

SP WA6PEVの信号を聞いてみる(REAL AUDIO)
(手元の資料では4ヤギとなっていて、今回聞いた中では最もアンテナの小さい局。この部分だけではコピーできないが、何度も聞いてコールサインをコピーした。)

SP 7K3LGCの信号を聞いてみる(REAL AUDIO)
 JAの信号ですが、グランドウェーヴと月からの信号が両方聞こえる。少し分かりずらいのですが、2.5秒後に聞こえるのが月からの信号だと思います。(最後の「K K」で判別)


 あ、それから、初めの課題の答。こんなモービルの設備でも、ある程度のアンテナとある程度のフロントエンド(プリアンプ)があれば、やっぱりEMEの信号は聞こえるんですね! (と言うよりも、いつも使用していた自作のトランスバーターの性能がいまいちなのかも。)



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