○ 移動運用記 ○

1998/9/5-6 静岡県富士宮市富士山新5合目/御殿場市宝永山山頂移動


初めての富士山

 開局して16年。何度も移動運用をしているのに、今まで富士山の静岡側から電波を出したことがありませんでした。そこで、1度は行ってみようということで行って来ました。本当は山頂でやってみたいけれども、体力に自信がありません。そこで、富士山にチョコッと付いている宝永山に行くことにしました。ここでも、標高は2,700m近くもあり、真北〜東〜南真西までの270°は富士山に掛からないのです。宝永山なら1時間半〜2時間で上れるようです。

新5合目に向けて

 静岡市出発は土曜日の15:00頃。430MHzで連絡を取りながら、清水IC近くのコンビニエンスストアに集合。メンバーは、JG2TSL,JH2DMI,JM2RUV,JP2NXAの4名。丁度、タイミングが悪く、コンビニエンスストアには食料がなーーんにも無い状態。おにぎりなんか1つもない・・・。仕方がないので、あるものの中から選んで買っていたら、配送の車がやってきた。まぁ、食料は確保できたから良いにしようっと。

 で、車は国道1号線を東へと進みます。富士川の手前で北へそれ、富士宮市内を通過し、富士山富士宮口新5合目を目指します。車に付けてある高度計はどんどん右へと振れていきます。

 2合目でトイレ休憩。道路の脇にあったトイレに立ち寄りました。ここまで車内は締め切った状態で来たのですが、外はもう寒いんです。下界で着ていた半袖シャツから、長袖に着替えました。

 モービルから50MHzをワッチすると、JA2IGYが段々と強力に聞こえるようになります。また、430MHzでラグチューの相手をしてもらっていたローカルの信号もみるみるクリアに聞こえるようになってきます。

 七曲がり駐車場というところでは、144MHzと430MHzの大きなスタックアンテナを発見。メジャーな移動地なんですね。その割にはこの辺りからの50MHzの信号はあまり聞いたことがありませんが。

 そんなこんなで新5合目に到着。道沿いに駐車場がありますが、かなり狭いんですね。車1台が通れる道の両脇が駐車場となっています。時期的に少しシーズンオフなのと、どんよりした天候のせいか渋滞にはなっていませんでした。売店の少し東側の空いているところに駐車。
17:30になっていました。休憩を入れても静岡市から2時間半で到着でした。標高は2,400m。はっきり行って寒い!

新5合目での運用

 早速、50MHzの5el Yagi-Udaを設営。実は、この日は須崎市の移動運用があるということで、それも少し狙っていたのですが、30秒ほど聞こえただけで、あとは浮かび上がってこず、QSOは失敗に終わりました。

 18:00からは、そのまま愛媛/高知の一斉移動の局を呼びます。JA5RCT/5 南宇和郡は強力に聞こえますが、他の局はあまり良く聞こえませんでした。アンテナのフロント方向は特に障害物はないはずなのですが・・・ 富士山の影になる大田区ビーコンはあまり強く聞こえません。しかし、三重ビーコンはかなり強く聞こえてきます。

 お弁当を食べたあとはみなさんが運用しているのを横で見ていました。 50MHzで八王子市のJR1IQLが呼んできたようです。メーターはかなり元気に振っていました。山の向こう側の筈なのに・・・。

5合目での運用の様子
JH2DMI,JP2NXA


 トイレに行きましたが、照明が無かったので車に戻って懐中電灯を持ってまたトイレに向かいました。ただ歩いているだけなのに、すぐ息が切れてしまうのはやっぱり気圧が低いからでしょうか?

 この新5合目に向かう途中、JH2LBDから「WARCバンドの富士宮市が欲しい」というリクエストをもらっていたので、その対策を考えることにしました。車に付いているモービルホイップは21/(28)/50/144MHzにしか対応していないのです。

 材料はJP2NXAにもらった電線1m。メジャーも無いので、144MHzのヤギを取り出し、ラジエーターの長さ=980mmから大体の検討を付けて電線を切っていきました。 21MHzのエレメントの先に60cmほどの電線をつなげば18MHzに同調する筈。何度かのトライの末、無事SWRが落ちました。

 24MHzですが、21MHz用の先端エレメントを抜いて、その代わりに電線を取り付けました。電線だけでは同調しないので、割り箸に電線を沿わせて自立させました。こちらもSWR=1.3くらいまで追い込めました。 これで、WARCバンドのリクエストにもだましだましながら応えることができます。

 20:30頃にJH2TQHに誰かが呼ばれ、「TSLはいるの?」と呼び出されてしまいました。その後、何故か富士山の中腹からパソコンの使い方講座をしてしまいました。

 21:00、WARCバンドのスケジュールの時間です。まずは24MHzで電波を出してみました。早速、JH2LBDが呼んできます。標高が高いこともあり、こんなアンテナでも599でした。続いて、このスケジュールを聞きつけた JE2CPIも呼んできました。その後、18MHzにもチャレンジ。こちらもすぐに2局とのQSO成立。騒ぎを察知した(?)JA2CXFも呼んできました。さらに、21MHz、144MHzとあちこちを駆けめぐってしまいました。最後に面白半分に430MHzFMで低周波発振器(IC706)の音のCWでCQを出したら、ローカル局からのパイルUPになってしまいました。Hi。

 22:00を回って、430MHzFMでCQを出してみましたが、近くの局に数局呼ばれたのみで終わってしまいました。


 この夜はビールを2缶開けて、就寝します。00:00を過ぎたというのに外は騒がしいです。と言うのも、富士山登山をする人はこの時間から上ってご来光を拝もうという人が多いからのようです。

 しかし、寒くて夜中に目が覚めてしまいました。富士山の自然環境を守る為、停車中のアイドリングは自粛するよう求める看板が立っていたので、ヒーターを付けるのも気が引けます。毛布や寝袋にくるまってなんとか暖をとってまた寝ることにしました。ついでにアルコールがまだ足りないのか?と思い、梅酒を飲んでしまいました。

登山の様子

 さて、朝、05:00過ぎから目が覚め、登山に備えます。食事をとり、着替えをして、荷物をまとめ・・・結構時間をとってしまいました。

 06:40。新5合目を出発です! 天気は曇り。風はそんなにありません。

出発前の様子
JM2RUV,JH2DMI
後ろに見えるのが駐車場
左側の看板が登山口


 いきなりの坂道。少し上ると、「バイオトイレ」がありました。

後ろに見えるのがバイオトイレです。


 その横を通り、新6合目を目指します。ここまでの坂が結構急で、僕は少し遅れ気味でRUV,DMIの後を付いていきました。NXAはちょっと辛そうです。

新6合目への登り
後ろに見えるのが新6合目売店

 なんだかんだで新6合目に到着。ここには売店がありました。風が強くなってきて、この後のアンテナ設営が少し不安になってきました。
 ここで写真を撮ったら、フィルムが無くなってしまったので、ここでフィルムを買いました。24枚撮のフィルムが入ってると思ったら、入っていたのは12枚撮だったので・・・。

 新6合目でしばし休憩した後、出発。この後少し歩くと、富士山山頂へのルートと宝永山へのルートとに別れます。宝永山へのルートは緩やかな下りです。こちらに向かうのは僕たちのグループしかいませんでした。

向こうに見えるのが宝永山

 途中、岩場を交えて、火山性の砂利のような中を進んでいくと、宝永火山口に到着。ここは、緩やかな谷底のような風景。1mくらいの大きさの岩がゴロゴロしていて、180度くらいの方向が山の斜面。少し気味が悪いです。

宝永火口にはこんな岩がゴロゴロ

 でも天気は少しは良くなってきて青空も所々に見えました。その山の斜面の一つに宝永山へのルートが見えます。なんだか急な坂・・・

 宝永火口での休憩のあと、その急な坂を登り始めます。これが苦しいのなんのって。火山岩を砕いた砂利のような中を進むのですが、足を地面に付けると、地面の中に足が埋まっていくような感じ。1歩進むと、半歩くらいは後ろに下がってしまい、ちっとも前に進みません。だんだんと要領をつかんできて、少しは前に進むようになりますが、それにしてもこれは苦行です。

これが問題の登り坂
もうヘタヘタ


 スキーの板を付けて雪の斜面を上る時に、足をハの字にしてエッジを効かせながら進みますが、それと同じ方法で進むと良いようです。

 足はそんなに痛くないのに、心肺機能が先にダウン。息苦しくなってすぐ休憩です。休憩すると少し回復してまた進みます。わざと呼吸に合わせてお腹をふくらまし、腹式呼吸になるようにしてみました。呼吸に合わせて足を動かすと、割とリズミカルに進むことができるようになりました。そうなると、多少苦しくてもなるべく休憩しないで進もうという気になってきました。

 ここで元気だったのは何と言ってもRUV。さすが若い! 僕はNXAと抜きつ抜かれつ進んでいきましたが、そのずっと先を歩いていました。最後の休憩は4人揃ってになったのですが、NXAが最初に出発していきました。その休憩した場所から尾根まではすぐで、NXAは悠々と尾根の上を歩いていきました。それを見たRUVが、なんとルートを外れて急な坂を近道して駆け上がっていきました。若い!

元気なRUV
坂道をいきなりダッシュ!

 僕とDMIは正規のルートで歩いていきました。尾根に出ると、あとは平坦な道を歩くのみ。背後には富士山、前には雲海。

平坦な尾根の上を歩く
この向こうに宝永山の山頂がある。

 しばらく歩いて、やっとで宝永山山頂に到着。09:15頃ですから、新5合目から2時間30分も掛かってしまったことになります。10kg以上の荷物を背負って、手にはアンテナを持ってですから仕方ないか。

 木の杭が何本も立っているのは、いかにも「どうぞムセンしてください。」って感じ。早速アンテナを組立、シャックを設営します。風はほとんど吹いていません。所々に青空が見えるものの天気は曇り。僕たちのグループ以外に人はいませんでした。

宝永山移動運用開始

 早速、50MHzでJH2DMIが一声を出します。心配していた西方向へ富士山の影響も少ないようで、結構飛んでいるようです。ここは標高2,693m。見通し範囲が広いのは当たり前で、東海3県、関東1円は目の前って感じの聞こえ方でした。相手が移動局といえども、宮城の局がバリバリに聞こえたのにはびっくりでした。こんなに強い宮城県の信号を今まで静岡県内から聞いたことがありませんでした。雲で下界は見えませんでしたが、もし、下界が見えたらすごい景色なんでしょうね。

50MHzを運用中のJH2DMI

 144MHzでもJM2RUVがパイルを捌いています、北ビームなのに、関東からかなり呼ばれているようです。関東の合間を縫って宮城/福島の局が呼んでくるようです。

144MHz運用中のJM2RUV
手前はJP2NXA
向こうに見えるのは富士山山頂

 自分は430MHzFMでローカルラグチュー。C601の0.3Wでも、静岡市、榛原郡、小笠郡のローカルとは楽々できました。もっとも、こちらの電波はRS51〜53 くらいでしか届いていないようですが。

 山の斜面に寝っころがってラグチューをしていたら、パラパラと雨が降ってきました。天気雨かなーと思ったら、空模様も怪しくなってきて、雨が少しずつ強くなっていきました。と言っても、小雨程度の降り方なので、運用は続行。霧も濃くなり、富士山はほとんど見えなくなってしまいました。

 10:55、50MHzを運用する番が僕に回ってきました。雨でログがグチャグチャ。だましだまし記入していきました。西ビームなのですが、関東の局がよく呼んできます。東海3県の中でも富士山が掛かる岐阜は少し苦手か? 三重の局はガツン!と聞こえました。関西へも良く飛んでいるようです。ショートQSOに徹しましたが、途中、空振りCQもしばしば。うーーむ。関東にビームを振ればもっと呼ばれたかな? 結局、4エリアには1局も呼ばれず。5エリアは、徳島、高知それぞれ1局ずつだけできました。

50MHz運用中のJG2TSL
雨でログを記入するのが大変

 この後、144MHzも運用したのですが、こちらでは4エリアにも呼ばれました。(広島県)

アンテナ設営の様子です。

50MHz:5エレYagi-Uda by JG2TSL 「バージョン天子」 9mh
144MHz:7エレYagi-Uda by JG2TSL 4mh

50MHzのアンテナはトヨムラマスト+オバケマスト2段の豪華組み合わせ

運用結果


 そんなこんなで運用結果です。

運用者 JG2TSL,JH2DMI,JM2RUV,JP2NXA
運用日時 1998 9/6 09:15-13:15
RIG 50MHz:TR-9300 + HL-66V 50W out
144MHz:TR-751 + HL-37V 50W out
ANT 50MHz:5el Yagi-Uda(by JG2TSL) 9mh
144MHz:7el Yagi-Uda(by JG2TSL) 4mh
50MHz JA1 JA2 JA3 JA4 JA5 JA6 JA7 JA8 JA9 JA0 TOTAL
SSB 26 14 7 0 2 0 0 0 0 0 49
CW 3 2 1 0 0 0 0 0 6
AM 0 0 2 0 0 0 0 0 0 0 2
TOTAL 29 16 10 0 2 0 0 0 0 0 57
144MHz
SSB 13 13 2 1 1 0 4 0 0 0 34


上記はJG2TSL運用分についてです。なんだかパッとしないような・・・

4人の合計は、50MHzが200局ちょっと、144MHzが150QSOくらいでした。

 13:30頃に運用を終了。13:45頃には現地を出発しました。上りで苦しめられた坂も、帰りが快適。1歩進むと、2歩進む。雨と霧の中、なんとか引き返してきました。それにしても霧でほとんど視界のない宝永火口は、地獄絵の様相でした。不気味度100%。

 そんなこんなの移動運用でした。

無事s、新5合目に戻ってきました!
JG2TSL,JP2NXA,JH2DMI,JM2RUV


 QSOしていただいた皆さん、ありがとうございました。

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