コンテスト参加記○

1998 東海QSOコンテスト


 東海QSOコンテストは、そのあまりにも長いコンテストナンバーと、特異なルール(同一局とは全バンド通じて1回のみ得点可)で、コンテストの中では非常に個性的な存在になっていると思います。

 僕自身は、高校の頃に高草山へクラブで移動したことがあったりして、以前からなじみのあるコンテストでした。僕の開局は1982/2/24ですから、実は開局して初めて参加したコンテストだったりします。1988年にも静岡県1位になったことがありますが、その後はしばらく参加しませんでした。静岡に帰ってきてから、また参加し始め、一昨年、昨年と静岡県内で1位を取ることができました。そして、今年です。2度あることは3度やってみたい。静岡県内3連覇にチャレンジしてみることにしました。部門は電信電話マルチバンドです。

過去の分析

 一昨年と昨年の成績を分析してみることにします。

 一昨年は、自宅から参加しました。

MHz point multi. score rig ant
3.5 30 14 JST245 DP
237 51 JST245 DP
50 11 JST245 8el Yagi-Uda
144 FT290+50W GP
430 FT712H GP
total 288 79 22,752


 自宅からの参加と言うことで、HFローバンドを中心とした戦略でやってみました。僕の自宅のロケーションでは、V,UHFではあまり得点が期待できないからです。7MHzで呼ばれ続けた結果、以上のような結果を残せました。
 始めの30分はこの時間しかまともに伝搬しない3.5MHzに留まり、その後、VUHFを一回りし、10時からは最後までひたすら7MHzでランニング。その合間にV/UHFで呼びに回るというスタイルでした。これしか戦略がなかったとも言えますが、戦略に迷いが無かった分、得点が延びたと思います。


 昨年は、一昨年の経験を踏まえ、「7MHzのランニングにV/UHFのマルチが加われば、さらにスコアが延びるだろう。」と思い、移動運用をしました。西に飛ぶだけでなく、1エリアの局数もそこそこV/UHFでできそうな、伊豆半島を選択。西伊豆の風速峠で運用しました。

MHz point multi. score rig ant
3.5 28 15 IC740 inv.vee
163 30 IC740 inv.vee
50 41 24 IC551+HL66V 4el Yagi-Uda
144 IC740+TRV+50W 10el Yagi-Uda
430 16 10 TM-833 12el Yagi-Uda
1200 TM-833 21el loop Yagi-Uda
total 258 88 22,704


 確かに、V/UHFのマルチは延びました。しかし、期待したほどではありませんでした。結論から言うと、「西伊豆から東海3県は遠かった。」ということです。確かに、50MHzでは強力な東海3県の信号を聞きましたが、430MHzではわずかしか東海3県の信号が聞こえませんでした。そのわずかな弱い信号を呼んでも、地元のモービル局の混信でQSOにはいたりませんでした。
 始めの40分あまりを3.5MHzで費やし、その後、V/UHFを1巡し、11時頃から7MHzをランニング。あとはV/UHFを時々覗くというパターン、でした。これは一昨年のパターンとあまり変わりません。V/UHFの不振もあったのですが、7MHzのランニングが思い通りにいかなかったのも苦戦の原因です。もう少し7MHzで呼ばれていればもう少しスコアが延びたと思うのですが・・・

1997年参加時のシャックの様子
1997年参加時のアンテナ設備の全景
強風の為、ビームアンテナは高く上げられなかった。
風速峠から西方向のロケ
海しかないが、いかんせん東海3県は遠い。

今年の戦略

 さて、過去の分析を踏まえて、今年の戦略を考えることにします。

・V/UHFのマルチを取るために移動運用をする。

 これは、去年と同じ考え方ですが、1エリアの局数をあてにせず、マルチのみを集めることを考えて、愛知県境まで行くことにしました。静岡県西部の移動運用地はあまり詳しくないのですが、JF2TARの助言に従い、引佐郡引佐町の城山に移動運用することにしました。この場所は10年ほど前に1度だけ移動運用したことがある場所ですが、もうほとんど記憶にないので、地図で再確認しました。

・7MHzでまともにランニングできるようにする。

 7MHzは最も沢山の局数が期待できるバンドです。「呼ばれる」環境を造り出さなければなりません。移動運用なので、50W出力は変えようがありません。昨年のinv.Veeはエレメントの端部が地面に近い場所になってしまい、これが飛ばない原因だったのではないかと思っています。そこで、今年は、なるべくアンテナの高さが稼げるように設営することにしました。


 以上がうまく行けば、7MHzの局数、V/UHFのマルチでハイスコアが狙えるはずです。

設備

 今回は究極の横着設備。普段車に取り付いているモービルトランシーバーのみを使用することにしました。発電器もいらなければ、配線手間も不要なので、ラクラク設営のはずですが・・・?

出発

 仕事を終えた後、食事を取り、風呂に入り、家を出たのは21:45。途中、JJ2GMH宅で、貸してあった1200MHzのLOOP YAGIを返してもらい、東名高速道路で西進。浜松西ICで下り、城山で直行です。夜も12時を回り、暗い山道を走るのは少し不気味です。もちろん、自分の他にだれもいません。

ゲートが閉まってる!

 城山まであと少しというところで、なんと閉まっているゲートが目の前に!

 こんなゲートがあるという事前情報はなく、非常に焦りました。ゲートの脇を通り抜けるのも至難の技のようです。あきらめて、他の山へ行くか・・・でも他には天竜のポイントくらいしか当てがありません。もう00:30。今からポイントを変えるのは憂鬱です。取りあえず、山道の途中で運用できるポイントを探すべく、山道を下り始めました。
 少し下りたところで、妙なことを思いつきました。「あのゲートには鍵が掛かっているのか?」 そうです、ゲートはあったけれども、鍵があった記憶はありません。戻ってみると、確かに鍵はなく、手で簡単にゲートを開けることができました。ホッとしながら、ゲートの中へ入ります。でも、少し罪悪感はありました。ゲートは車が入れないように作った筈。いや、でも出来たばかりのゲートで鍵がしてないということは、まだ工事中なのかな? それならまだ入ってもいいのかな・・・?

 とにもかくにも、城山には到着です。「あのゲートに鍵が掛かったら、もうここには車で来られないかも。そしたら、これがこの場所では最後の移動運用になるのかな?」と思いつつ、酒を飲んで寝ることにしました。ちなみに、移動運用で泊まるときはいつも酒を飲みます。環境の変化に弱い僕は車の中ではなかなか寝付けないのです。

設営

 朝は06:00に起床。辺りをウロウロと歩き、アンテナの設営を始めます。

 3.5/7MHzのinv.Veeが最も場所を選ぶので、地面にワイヤーを展開し、大体のマストの位置を決めます。柵や立木を利用して、なるべくエレメントの端部が地面から離れるように設営しました。SWRの調整も入念に・・・ エレメントの端部も地面から3mほど上がるように工夫しました。

 しかし、この設営に思いの外、時間が掛かってしまい、調整終了は08:00を回っていました。そこから、V,UHFのアンテナを設営。ゆっくりとやっていたら、なんと、もう時間は08:40。シャックの環境整備をしたら、もう08:50です。シャックを簡素化したのに、この有様。焦りつつも開始の09:00を迎えます。

シャックは実にシンプル!
IC-706mk2
TM-833
今年は風が無かったので、7段ポールをフルUP!
トップに50MHzです。
144MHzのアンプはバッテリーと共に屋根の上・・・

開始は定石通りの3.5MHz

 表題の通りです。SSBで呼びに回るも、バンドは閑散としていて、聞こえたのはわずか2局。この2局とQSO後、SSBでCQを出してみます。しかし、これも3局で打ち止め。空振りのCQを続けても仕方ないので、09:12にCWにQSY。こちらでは4局を呼びに回り、またCQ。しかし、こちらも4局で打ち止め。もう1度SSBでしつこくCQを出しますが、全く応答がありません。焦りながらも3.5MHzを後にします。

にぎやかな50MHz 静かな1200MHz

 3.5MHzの不振に焦りに焦りながら、最も効率の良さそうな50MHzにQSYです。09:30。CWで呼びに回り3QSO。SSBでは沢山の局が聞こえるので片っ端からQSOしていきます。快調にQSOを重ね。14QSO。ここからCQに移ります。09:47に始めて、10:17まで粘りました。
 段々と応答が悪くなってきたので、合間を縫って、1200MHzを聞いてみます。愛知県境だから、たくさん局数のいる名古屋近辺と出来れば、相当にポイントが延びるぞ・・・と期待していたのですが、わずかに三重の局が2局聞こえるだけです。その三重の局は名古屋近辺と順調にQSOしていますが、相手局はほとんど聞こえないのです! 愛知県境まで来ても、やはり名古屋は遠かったか・・・ 1200MHzはこの2局としかQSOできませんでした。
 もっとも、50MHzでは名古屋も遠くなく、そこそこQSOを伸ばすことができました。CQでの25QSOの後、呼びに回って3QSO。


430MHz

 10:30、やはりマルチ目当ての430MHzにQSYします。1200MHzよりも、多くの局は聞こえます。しかし、結論から言えば、大量得点源の名古屋とのQSOは失敗に終わりました。それでも、局数の多い430MHzです。CQを出したら少しは呼ばれ、QSOを伸ばすことが出来ました。名古屋は山の陰になるけれども、愛知県東部や三重県にはそれなりに飛んで行っているようです。30分で15QSO。QSOの効率は悪いのですが、ニューマルチばかりなので、許します。しかし、バカ丁寧な言い回しにキレそうになること数度・・・。もっと簡潔に喋れないものなんでしょうか・・・。

期待の7MHz・・・だが

 11:10。ここまでマルチ重視でV/UHFにへばりついていた為、2時間でオールバンドで70QSOしかしていません。ここで局数も肉付けしたいところです。それには7MHzしかありません。
 まずは呼びに回ろうと、ワッチ。比較的強く聞こえる局を呼んでみます。・・・応答がありません。もう1度呼んでみます。・・・無視されました。あれれれれ? と思ってSメーターを見ると、メーターの振れがやけに元気がありません。SWRを計ってみると・・・無限大! アンテナが壊れたか? 焦りながら、よーーーく考えたら、実はアンテナの接続ミスで50MHzのアンテナがつながってました。チャンチャン。切り替え器を操作して、正規のアンテナをつなげます。少しタイムロスをしてしまったけれども、今度はすぐに応答がありました。

 バンドの中はQRMMMでグチャグチャ。CQを出す前に聞こえてる局を片っ端から呼びます。ここで9QSO。QRMMMでもランニングしなければ仕方がないので、隙間を探してCQを出します。しかし、全く呼ばれません。うーん、どうもまともに飛んでいないようだ・・・。inv.Veeの設営があまり良くなかったのか、山の上なので接地抵抗が高くて飛ばないのか・・・?

調子が悪くなったら50MHz

 7MHzの不調に悩みながら、またもや50MHz。11:30。ここは相変わらず良く飛んでいるようです。客層が変わったのか、CQを出したら、また呼ばれ始めます。15分ほどやって12QSO。ペースダウンした所で、430MHzでニューマルチになる局と1局QSO。これは50MHzでCQを出しながらワッチをして目星を付けていた局でした。

忘れていた144MHz

 11:55。ここまでなぜか忘れていた144MHzをチェック。SSBと電信でそれぞれ1局見つけてQSO。なんか弱いなー。次に電信でまた1局発見。なかなか取ってもらえませんでしたが、なんとかコピーしてもらってQSO開始。QTHは「INASAGUN」あっれれれ?なんで同じ引佐郡でこんなに弱いの? アンテナを見上げますが異常はないようです。うーむ。
 でも、その答えはすぐに分かりました。なんと、屋根の上に置いたリニアアンプのアンテナ端子には、何もつながっていない!!! 逆に言うと、アンテナ無しで2局とQSOしてしまったのでした。アンプは大丈夫なんだろうか? 気分を取り直して呼びに回ると、今度は簡単に取ってもらえました。ホッ。ここで12QSO。

7MHz電信

 もう、12:25。折り返し地点を通過してしまったのに、まだオールバンドで100QSOちょっと。これではサマになりません。ここで7MHzでも混雑しているSSBを避けてCWでCQを出してみました。すると、呼ばれる、呼ばれる・・・。QRMのない電信では多少信号が弱くてもなんとかなるようで、快調にQSO数が延びました。ナンバーのコピーはかなりきつかったけれでも。途中、合間に430MHzに呼びにまわりながらも1時間ほどランニングを続け、45QSO。やっとで150を越えました。それでも、昨年の258QSOには依然として100以上の差があります。残り時間は80分。もう残り時間がありません。

強引にも7MHzSSB

 13:40。QRMMの7MHzでCQを出す覚悟を決めました。もうここしか、局数が延びるところがないのです。ヘビーQRMの中、弱い電波で周波数を確保するのは容易なことではありません。それでも、なんとか隙間を見つけて、入っていきます。決してレートは良くないのですが、仕方ありません。QRMが静かになった一瞬だけパイルになることもありましたが、終始、QRMに押され気味でした。それでも、1時間粘り、44QSO。飛ばないアンテナではこれが限度でしょうか・・・?

終了まで

 7MHzSSBがあまりに呼ばれなくなってきて、QRMも激しくなってきたので、最後はめまぐるしく周波数を変えることになってしまいました。焦っているのが後からでも良く分かります。しかし、こういう時は焦れば焦るほど結果に結びつかないようで、最後の20分は5QSOしかしていません。

終了

 15:00を迎えるのが非常に空しかったです。ログは200QSOを越えたばかり・・・。これではいくらマルチが多いと言ってもハイスコアは望めません・・・。

結果

 このコンテストは、「全バンド通じて同じ局とは1QSOのみ有効」というルールがあるので、念入りに重複チェックを行うことになります。下記に結果を書きますが、これはコンテスト終了後に集計したものです。重複QSOはニューマルチになるバンドで有効になるように調整しました。

MHz point multi. score rig ant
3.5 13 13 IC706mk2 inv.vee
94 27 IC706mk2 inv.vee
50 53 39 IC706mk2 5el Yagi-Uda
144 14 14 IC706mk2 10el Yagi-Uda
430 21 19 TM-833 15el Yagi-Uda
1200 TM-833 21el loop Yagi-Uda
total 197 114 22,458


 あぁ・・・昨年のスコアをさらに下回っていました。原因は7MHzの不振。これに尽きます。もっと、ランニングができていればなぁ・・・

 東海QSOコンテスト3年連続出場の野望(?)は果たせましたが、1年目に自宅から運用したのが最も高いスコアだということになりました。

YEAR point multi score
1996 288 79 22,752
1997 258 88 22,704
1998 197 114 22,458

 毎年、マルチを増やしているのに、局数が減っていて、スコア的には少しずつ落としているという・・・。でも、今回は局数の半分以上がニューマルチという結果になりました。これはこれですごいことかもしれません。


 QSOしていただいた皆さん、ありがとうございました。またのQSOよろしくお願いします。


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