機器○

中波放送排除用HPF


製作のきっかけ

 ローバンドは私はあまり得意とするバンドではありませんが、不得意だからこそチャレンジしてみようということで、今年(2000年)のARRL DXコンテストのCW部門では3.5MHzシングルバンドでエントリーしてみました。(JI2ZJSより)
 少しでもDXに有利にということで、「ワイヤーアンテナハンドブック」を参考にして3/4λスローパーというものを張ってみました。全長60mほどの巨大なワイヤーアンテナです。こんなアンテナは自宅に張るのは不可能で、山の上のクラブシャックだからできたことですが、このアンテナには弱点がありました。
 全長60mを1/4λに換算すると、1000KHzくらいになります。そう、これは中波放送のメインストリートの周波数です。
 JI2ZJSシャックからは目視できる範囲に10KWの中波放送局が3局あります。(639KHz=NHK第2静岡、882KHz=NHK第1静岡、1404KHz=SBS静岡) 今回張ったアンテナを介して、これら中波放送局が受信機に与える電界は相当なもので、まともにこれらの中波放送を聞けば、メーターは振り切り、音は歪んでしまいます。
 基本波がそのまま聞こえるならまだしも、高調波がアマチュアバンド内に飛びこんでくるのでたまりません。具体的には882KHz x 4 = 3,528KHzで、これがS=9で聞こえてきます。AMで、しかも、高調波なので帯域も結構あり、受信にかなりの影響を与えます。
 しかし、ATTを入れると、この信号はかなり抑えられます。ATTの表示が−20dBなのに、この高調波はそれ以上に減衰します。と言うことは、この高調波は放送局で作り出されているものではなく、受信機内部の飽和によって作り出されていることが想像されます。つまりフロントエンドのフィルターが甘いために、初段のアクティブ素子までこの中波の強力な電波が飛びこんでいるのでしょう。初段のBPFが細分化されているか、同調形のフィルターが搭載されていれば良いのですが、あいにくクラブにこの時にあったIC−760はそのようになっていないようなのです。
 このIC−760には受信アンテナ端子があり、ここにHPFを入れることでこれを解決しようと思い立ちました。そして急遽製作したのが、このHPFです。
(念のため書きますが、送信出力が通過する箇所にはこのフィルターを挿入してはなりませぬ。)


回路図と内部構造

 参考書(トランジスタ技術別冊)を見ながら回路を計算しました。計算結果そのままでは該当する素子がないので、値の近いもので構成しました。定K型4段のHPFで、インピーダンスは50Ω。4段にした理由は、ケースにパーツが入る丁度良いサイズが4段だったからです。

回路図です

 入力と出力はどちらでも構いません。左端と右端のインダクタンスの値が違うのは、お店で買うときにに間違えたからです。Hi(2.2μHの仕切りの所に2.0μHが入っていたのをそのままつまんで買ってきたので。) RFのコイルというと、FCZコイルやトロイダルコアに巻いたものを思い浮かべますが、このくらいの周波数では市販のマイクロインダクタンスでも該当の値があるし、実際、実用になるようです。入出力の端子間に空中配線しました。

内部の写真です

 まぁ、内部なんてこんないい加減なもんです。ローバンドだから許される内部構造かも。


使用感
 結論から書くと、大成功です。
 このフィルターを入れると、問題となっていた高調波はほとんど聞こえなくなります。わずかに聞こえるのは放送局そのものから出ている高調波だと思います。高調波の影響だけでなく、相互変調されたようなノイズも心持減ったような気もします。
 元信号の中波をそのまま聞くと、S=9は振っていますがメーターが振り切れることはありません。コストは1500円ほどしか掛かっていませんが、対費効果は抜群でした。
 これで快適にコンテストに参加できたわけですが、ローバンド、しかも垂直系のアンテナを使用していたため、受信はやはりノイズとの戦いになっていました。

測定結果
 さて、先に使用感を書いてみましたが、どのくらい減衰しているか測定してみました。SSG買っちゃったんだもんねー。(菊水 KSG−4500T) JST−245を受信機として、Sメーターを頼りに書いたグラフが以下のものです。

測定結果のグラフです

 横着して、ところどころでしか測定しませんでした。しかし、傾向はつかめると思います。
 3.5MHz帯ではわずか−1dBしか減衰がありませんが、中波放送局のある1400KHzで−55dB、900KHzで−77dBと、かなり減衰しています。これだけ減衰していれば十分でしょう。
 蛇足ですが、1900KHzでの減衰が−11dBと、やや大きいですが、1400KHzとのレベル差が大きいので、トップバンドでもそれなりの効果が期待できそうです。

 肝心のコンテスト参加記は別に書きますね。
 こんな些細な小細工ですが、それが大きな効果をもたらしたときは、コンテストに参加したと言っても一味違ったものになるのは言うまでもありません。結果がどうあれ・・・


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